夢は大きく歩みは手堅く

トリハダ代表 野島優一のブログ

なんで起業したのか

僕がどうして「アート作品のレンタルサービスで起業する」に至ったのか、なんとなくわかっているつもりで人にも説明してきましたが、自分が忘れないためにも整理しておこうと思います。

まずその理由をすごく大まかに分解すると以下の2つになります。

A 日本でアートをもっと身近にしたいという思いが強くなった
B もともと持っていた起業意欲が強くなった

このAとBそれぞれの思いが強くなった理由はこんな感じです。

「A 日本でアートをもっと身近にしたいという思いが強くなった」理由。

A.1 自分がアートを好きだから。自分が感じるアートの魅力をより多くの人に伝えたい、感じてほしいと思ったから。

facebook等のSNSで毎日やっている「1日1アート」という投稿もこの思いからやっている。僕の投稿を見て誰かが少しでも興味を持ってくれたり、新しいアーティストや作品に出会えたり、展示を観に行こうと思ってくれたりしたらとても嬉しいと思って日々投稿している。すごく小さなことだけど自分の記憶の整理にもなるし、しばらく続けてみる予定。

A.2 日本はアートの敷居が高く、元々好きな人や業界関係者以外はその世界に入っていきづらいと思ったから。

さらに分解するとこんな感じ。

・ A.2.1 アートは美術館やギャラリーに行ってオシャレに楽しむもの、みたいなイメージが強いから。

・ A.2.2 アート、特に現代アートはよくわからないもので、ごく一部の人にしかその良さが理解できない、というイメージが強いから。

・A.2.3 アート作品は高額で、一般人には手が出せないことが多いから。

A.3 人間にとって最も価値があるのは、一生心に残る感動であり、アートはその感動を与えてくれるものの1つだと思ったから。

・人間は環境に慣れることができる生き物である。それでもずっと記憶に残るのは深い感動だと思う。死ぬ時に思い出すもの、と言ってもいいかもしれない。

A.4 一生心に残る感動は、音楽や映画、本、食事、旅行などアート以外のものからも得られるが、アートがその中で最も日本で一般人になじみがなく、ポテンシャルがあると思ったから。

 

「B もともと持っていた起業意欲が強くなった」理由。

B.1 自分に自信がついたから。

正確には、リサーチ・インプット能力、業務処理スピード、ビジネス/商売における基本的な思考回路と判断、発想の柔軟性、多くの人が面倒くさくてやりたがらないことをコツコツ淡々とやる力(笑)、などに自信がつき、「これなら会社組織を出てもやっていけるかもしれない」と思ったから。どの能力も具体的な経験を通して自信をつけたが、ある上司が僕に自由に仕事をさせてくれたことが大きい。その人と仕事ができたのは幸運だった。

B.2 既にできあがった事業に手を加える仕事(1→10、10→100)より、ゼロから事業を立ち上げる仕事(0→1)の方が楽しくて、自分に向いていて、かつ社会的にも価値があると思ったから。

起業はまさにゼロイチである。また、これは価値観の問題だが、何においても最初にやった人はすごいと思う。

B.3 上司がいる状態で仕事をするより、上司がいない状態で仕事をした方が、自分のパフォーマンスが上がると思ったから。

これは他人に対して必要以上に気を遣ってしまう自分の性格が原因である。前述上司は僕にとてものびのびと仕事をさせてくれて本当に感謝しているが、それでもなぜか僕が勝手に気を遣ってしまい、そんなことせずにガンガン仕事を進めた方が結果的に上手くいったと思われることが一度ならずあった。自分の考えも大方間違っていなかった。この性格を自覚しながらも直せないということは、上司なしで仕事をした方が、自分のためにも社会のためにも良いと思った。

B.4 自分の仮説を思う存分試したいと思ったから。

これは1つ前の理由とも少し重なる。自分が思うことを思いきりやるには独立した方がやりやすい。会社組織の中でやるとなるとどうしても障害が多い。どんな会社でもそうだと思う。

B.5 ローリスクでの起業が可能になったから。

これは時代によるところが大きい。ウェブサービスであれば超低コストで立ち上げられるし、リーンスタートアップの考え方ならウェブに限らずそうだ。資金が必要になった場合は、以前に比べて調達もしやすくなっている。また、そもそも個人でできることが非常に多くなっているので、まずは1人で事業を立ち上げることも可能であり、人を雇うリスクも負わなくていい。起業における成功確率が上がったかどうかはわからない。が、ハードルが大きく下がり、チャンスが増えた時代だと思うので、この時代に生きていることは幸運だった。

B.6 新しい事業やベンチャー企業はほとんどが失敗しているので、自分が失敗したところで社会にとってはどうってことない、失うものもないと思ったから。

僕が失敗したって世界にはほとんど影響なくて、地球は回るし社会は動いていく。逆に成功したらものすごいことが起こるかもしれない。その意味で起業は本質的にローリスク&ハイリターンだ。

B.7 たとえ失敗しても死ぬわけではないので、やりたいことをやらずに後悔するよりは、やって後悔したほうが良い人生になると思ったから。

自分に言い訳をして生きていく人生は辛い。たぶん。

B.8 数人の起業家と知り合い、刺激を得たと同時に、「自分にもできそう」と思ったから。

3年前くらいから何人かの起業家と知り合って仲良くなった。これはとても幸運だった。教わったことは数え切れないくらいある。昔の友だちでいつの間にか起業していたヤツもちらほら。これも刺激になる。

 

加えて、AとBの両方にかかる理由を1つ挙げておきます。

A.5/B.9 アートの分野には起業家が少ないから。

これは後から気づいたことでもある。今は起業のハードルが下がったため、起業家の数が急増している。中でも盛り上がっているのはITやウェブの分野だが、そこには起業家が多すぎるし、従って優秀な人も多いことになる。自分が起業家として圧倒的に優秀だという自信がない限りはそこで勝負するのは厳しいと思った。でもアートの分野には起業家が少ない、というかそもそもアートに興味のある起業家が少ない。だから、起業家としての競争戦略を考えるとこの分野は自分に適していると思った。どうせやるなら誰もやらないことをやりたいし、その方が、社会における自分の存在意義が大きくなるというか、社会全体を見たときの自分の貢献度が高くなると思った。

 

そして、Aに関しては、具体的な方法として「a アート作品のレンタルという事業形態を選んだ」わけですが、その理由を整理します。

a.1 日常生活の中でアートに触れる機会を作る必要があると思ったから。

美術館やギャラリーにいかなくてもアートに触れられるように、飲食店やオフィスなど様々な場所にアート作品を置き、アートの供給を増やす必要がある。日本人はアートに興味のある人が少ないと言われるが、その原因は供給の少なさにあると思っている。この仮説を検証したい。

a.2 アートを低価格で楽しめる機会を作る必要があると思ったから。

アート作品は通常購入して楽しむものだが、概して価格が高額であり、それがハードルになっている。a.1 のためにも価格を下げる必要がある。レンタルなら月額制で低価格にすることができる。

a.3 シェアリングエコノミーの市場が拡大しているから。

安易かもしれないが、シェアリングエコノミーの波が来ていることは追い風になると思った。

 

さらにAに関する別の視点では、「b 日本を選んだ」ということもあります。アートでビジネスをするなら、もっとアート市場の大きい国はアメリカをはじめとしていくらでもあるし、英語が使える人間としては海外で働くことも不可能ではありません。その上で日本を選んだ理由を整理します。

b.1 住んだこともない国でいきなり起業するのは、成功確率がとても低いと思ったから。

そもそもアートという未経験の分野で起業するので、さらに土地まで未経験のところに飛び込むのは、さすがに無謀に思えた。

b.2 日本はアートの市場が小さいが、だからこそそれを拡げる仕事には価値があると思ったから。

もともと市場が大きいところよりは、まだ市場が小さいところで事業を起こした方が、市場に対するインパクトも大きいし、社会にとって価値のあることだと思った。

だいたいこんなところです。

1つ付け加えると、このアート作品のレンタルサービスは、カナダにあるフォーシーズンズホテルがやっていた「レストラン内ギャラリー」から、最初の着想を得ています。その取り組みはレンタルではなく展示と販売のみ。若手の現代アーティストの作品を店内にインテリアとして展示しておき、来店したお客さんは気に入った作品があれば買うことができる、というものでした。同ホテルチェーンの創業者の本に出てきた話で、現在はやっていないようでしたが、なるほど、面白いアイデアだな、と思ったのをよく覚えています。

 

いま読み返すと、考えが変わりつつある部分もやはりあります。節々で振り返って原点に立ち返るのにこの記事を使おう。

アート関連の情報収集で見ているメディア

について、これもある友人に聞かれたので書いておきます。

今更ですがブログ、というかネットは便利ですね。1度書いておけば誰でも何回でも読める。会って話すのより少し労力かかりますがより多くの人に伝わる、しかも時には予期せぬ人が勝手に読んでくれていたりするので、コスパが良いですね。

で実はアートに関する情報収集は僕も悩んでいて、これさえ見ておけばOKみたいなメディアは存在しないと思っています。情報があちこちに散乱しています。その理由はたぶん

・そもそもアートの範囲が広がっているというか、アートと他の何かを掛け合わせたイベントや作品が増えていて、「アート」と一言に括るのが難しくなっている

・個人個人の関心が多様化しているのでマスなメディアが作りにくい

・ウェブメディアの数が増えすぎている

・マニアックなイベントも多いからメディアが拾いきれていない

・アート好きの間ではクチコミでも情報が入ってくるのでメディアに頼る必要がない

といったところではないかと思います。逆に僕の方が、みんながどんなメディアで情報収集しているのか知りたいくらいです汗。

では本題のメディア紹介です。読んでいる方、ご自身オススメのメディアあればぜひご紹介いただけると、他の読者の役に立つと思うのでよろしくです。

僕がよく見ているもの

1. CINRA.net

www.cinra.net

「シンラ」と読みます。アートに限らずカルチャー全般を扱うサイトです。音楽や映画の話題も多くて個人的には重宝しています。唯一欠かさずメルマガをチェックしているメディアかもしれません。時々あるロングインタビューも読み応えあって好きです。

2. bitecho

bitecho.me

美術系の歴史ある雑誌「美術手帖」が運営するサイトです。といってもそんなにカタい印象はないです。アート以外のトピックもありますがあくまでアート中心。

 

3. KAI-YOU.net

kai-you.net

「カイユウ」と読みます。CINRAよりもキワドい、ややマニアックな情報が多めです。けどカバー範囲は同じように広いです。

4. ミューぽん

ミューぽん Mupon: 東京の美術館割引アプリ | Tokyo Art Beat

これは割引アプリなんですが、

・今開催中の展覧会が一覧で見られて

・どの展覧会が今日開いていてどれが休館日なのか一目でわかって

・もうすぐ終わっちゃう展覧会はその日付まで教えてくれる

という、メディアとしてもかなり使えるアプリなのでオススメです。「今日、今から見に行ける展示は何かないかなー」みたいなシーンにピッタリです。有料ですが、年に4つか5つくらいの展示に行けば元がとれます。友達も1人まで割引、なんてのもあります。

 

僕は見ていないけど情報がたくさん載っているもの

5. ART iT

http://www.art-it.asia/top

情報もレポートも充実しているのですが、その情報を受け取る場所が充実していないので見ていません。facebookでも発信してないしメルマガもない…。コンテンツはあるのにもったいないですね。

6. artscape

artscape.jp

ここは情報量多いのですが、サイトが見づらいのと、カバー範囲が広すぎて自分が興味ない展示の情報もたくさんあるのとで見ていません。でも展覧会のレビューはガッツリ書かれていて貴重な資料になっています。後から調べるのにはいいかも。

7. Tokyo Art Beat

www.tokyoartbeat.com

ここも情報量は抜群なんですがいかんせんサイトが使いにくいので見ていません。名前の通りデザイン系の情報も多いです。カレンダー方式なので、どの展示がいつからいつまでやっている、というのがわかる素晴らしく網羅的なサイトなのですが、とにかく見づらい、使いにくい。具体的に言うとこんな感じです。

・自分の興味分野にそった探し方がしにくい

・各展示の個別ページが見づらい

・「このページを見ている人はこんなページも見ています」的なレコメンドがあまりピンとこない

かと言ってどう改善すればいいのか、いまいち僕もわからなくて恐縮なのですが、少なくともジャンル分けやタグ付けをもっと細かくやって、それを基準に検索できるようにするといいのではと思います。データベースとしては素晴らしいので本当に勿体無いです。ちなみに前述のミューぽんはこのTokyo Art Beatが発行しているようです。

 

8. 美術手帖

www.bijutsu.press

前述のbitechoの母体になっている雑誌です。110年もやっているそうです。真面目なアートの雑誌という印象。ちょっとカタそうなのとちょっと高いのとでまだ手を出していません。でも読まなきゃいけないかなーと思い始めています。

以上メディア紹介でした。あとはfacebooktwitter(主に友人のシェア)、それと少しクチコミとinstagramから情報を仕入れています。もっといい方法がありそうなので日々模索しています。

勝手にオススメするアートスポット@ニューヨーク 2016年10月時点

先日2週間ほどニューヨークに行ってまいりました。主要な美術館とギャラリー街はだいたいまわってきました。その後友人から「自分もNY行くからオススメを教えてほしい」と言われ、せっかくだからとガチでオススメスポットを書き連ねていたら結構な量になり、ついでなのでブログにも載せてみようと思った次第です。

 

注:

・当たり前ですが主観です。現代アート寄りです。

・2016年10月21日(土)〜22日(日)に開催している展示を念頭においています。

誰かの参考になれば幸いです。これをきっかけに面白い作品に出会ったり、アートって面白い! と思ってくれたら超幸いです(もはやそのために生きていると言っても過言ではない)。以下転載。

 

MoMA (2h〜いくらでも)
モネやゴッホの作品は数は確かにいくつもあるので好きならマスト! ただしアホみたいにドデカくて全部回るのには丸2日くらいかかるので注意。今も11個くらいの展示をやってる↓
http://www.moma.org/calendar/exhibitions
のでどれに行くか決めとくと良いです。
モネやゴッホはこの展示。美術の教科書みたいに有名作品がズラズラしてる↓
http://www.moma.org/calendar/exhibitions/1219
現代アートならこの展示。草間彌生の変な椅子とかあるよ↓
http://www.moma.org/calendar/exhibitions/1624
あと個人的にめちゃ面白かったオススメはこの2つ↓
http://www.moma.org/calendar/exhibitions/1650
http://www.moma.org/calendar/exhibitions/1655
それからこれは5分くらいで観れる幻想的で変わった作品↓
http://www.moma.org/calendar/exhibitions/1652
俺行ったときはやってなかったけどこれも面白そだねーインテリアがテーマみたい↓
http://www.moma.org/calendar/exhibitions/2714

◎Guggenheim (1h)
個人的には今の展示はあんまり面白くなさそう。James Turrellも2013年の展示だけだったみたい。ただ建物は確かに面白いし、シャガールカンディンスキーが好きならたくさん観れる(保有作品多数)↓
https://www.guggenheim.org/exhibition/guggenheim-collection

◎MAD: Museum of Arts and Design (1h)
ややマイナーな美術館だけど今やってるこれがすごく面白かったのでオススメ。でもよくわからんかったらごめん!↓
http://madmuseum.org/exhibition/coille-hooven
名前の通りデザインとか工芸に寄った展示が多めだから貴社に役立つかも?

◎ChelseaかLower East Sideのギャラリー街
現代アート好きならぜひ美術館だけでなくギャラリーも行ってほしい! 以下2つが有名なギャラリー集中エリアで、道歩けばいくらでもギャラリーがあります。どこも無料で入れるしさっと観れてすぐ次行けるから、30分ブラブラするだけでも何軒も観れます。勝手なオススメ↓

・Chelseaエリア (0.5h〜3h)
ファンキーワンダーランド的な、壁とか天井も使った楽しい展示↓
http://www.lehmannmaupin.com/exhibitions/2016-09-08_osgemeos
本物の絵葉書に重ねて絵を描いたすごく面白い作品↓
http://www.magnanmetz.com/exhibitions/david-opdyke-truthful-hyperbole
これは近くにあるアート系の本屋、かなり面白い↓
https://www.printedmatter.org/

・Lower East Sideエリア (0.5h〜3h)
エロ多めのエキセントリック系↓
http://www.jamesfuentes.com/exhibitions/2016/velvet-rage-flaming-youth-and-the-gift-of-desperation
音と映像の関係を考えさせてくれる作品、面白かったー↓
http://www.lehmannmaupin.com/exhibitions/2016-09-07_alex-prager
ギャラリーと服屋が一緒になったみたいな場所↓
http://www.xyatelier.com/new-events
これも近くにあるカルチャー系の本屋、かなり面白い。女性ドラマーだけとりあげる雑誌とかあった↓
http://bluestockings.com/

◎その他、もし時間が余れば…
・Whitney Museum of American Art (1〜2h)
外観がめちゃ面白いので一見の価値あり!展示は基本的にアメリカの近現代アートなので、ハデな色彩なアメリカっぽい作品がメインです。Chelseaエリアの一番南にあるので、俺は半日かけて北から順にギャラリーをまわっていってココで締めました
http://whitney.org/Exhibitions
・New Museum (1h)
外観が面白い。よく崩れないよなって感じ。展示は今は微妙かも…。Lower East Sideエリアにある
・MET Breuer (0.5〜1h)
建物が変わっているので見る価値はあると思う。けど中は展示内容がピンと来なければ特に…パウル・クレーとか好き?↓
http://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2016/humor-and-fantasy-paul-klee
・MET: Metropolitan Museum (2h〜いくらでも)
近代までの作品ばかりだし古いのばかりなので現代アートファンにはあまり刺さりません。パスしてよいと思う。ただアメリカの凄さとか威厳とかスケールのデカさとかを感じるにはピッタリな、信じられないくらい広い空間。個人的にはむしろ近くのギャラリーのこれオススメ↓
https://www.perrotin.com/exhibitions/daniel_arsham-circa-2345/3006

 

 

60-70年代のアートが世界的に再評価されているらしい

のだそうです。

個人的には、アートとはずれるけどすごく思い当たるところがあって、この時代のものにここ数年ハマっています。

ちょうど60-70年代の、寺山修司横尾忠則が活躍した演劇の周辺の美術に2年くらい前からハマっています。新宿なんかにあった劇場でかなり過激で前衛的な演劇をやっていたようで、これは海外でも評価されて公演もやっていたみたいです。演劇そのものについてはまだ詳しく知らないのですが、面白いのはそのポスター達。演劇の内容が過激なことも相まって、今の時代からすると頭がおかしいのではないかとさえ思ってしまうくらい奇想天外なものが数え切れないくらいあります。渋谷のポスターハリスギャラリーというところがよく展示をやっているので興味ある人は観に行ってみてください。

それから音楽のアナログレコード。CDの登場とともに消え去りつつあった媒体ですが、実はここ数年で人気が再燃しています。日本でも大型レコードショップが新たにできたり、アメリカでは2015年にレコードの売上が過去最高を記録したりと、世界的にブームになっています。おそらくクラブ文化の普及に伴っているのかと。で自分もそれに乗っかった感じですが、実際にレコードで音楽を聴くのはすごく楽しくてハマる一方です。もちろんダウンロード配信やストリーミング配信の手軽さとは真逆で、まずわざわざレコード屋に出向いて好きなレコードを探し当て、持ち帰ってレコードをケースから取り出し、そしてターンテーブルに電源を入れて盤を回して、針を置いてようやく聴けるという、冷静に考えればアホみたいに面倒くさい手順が必要です。そしてレコード屋では商品の検索なんてできないのでインデックスを頼りに1枚ずつめくって探すハメになります(オンラインストアは除く)。AmazoniTunesがなかった時代と全く同じことをしているわけですね。CDと比べてもだいぶ面倒です。曲の頭出しも手探りです。大体30分くらいで片面終わってしまうので時々裏返す必要もあります。でもそのすべてが楽しくて、自分でも驚いているくらいです。たまたま僕の好きな音楽は60-70年代に発売されたレコードが多かったりすることもあり、前述の再評価の対象と重なります。

カメラではフィルムカメラも人気が再燃しているようですね。僕も『フォトグラファーズ・イン・ニューヨーク』(原題『Everybody Street』というニューヨークのストリート写真家のドキュメンタリー映画を観て興味を持ちました。デジカメやスマホで写真を撮るのはすごく手軽で、何枚でも撮れて、撮り直しも加工もできてなんでもありでそれはそれで良いのですが、フィルムカメラは枚数制限があり、撮り直しができない、それどころか現像するまでどう撮れているかわからない始末。加工も素人にはできません。けどその不便さや、自由の効かなさが逆に楽しかったりするのだと思います。

 

レコードとフィルムカメラは必ずしもアートに分類されませんが、文化として広く捉えれば同じ流れにあるような気もします。背景にあるのは、デジタル化が進んだことでアナログへの反動が起こった、あるいはアートに関してはもうあらゆるものがやり尽くされてしまってネタ切れになりつつあり、古いものに新しさを求めるみたいな流れができた、みたいなことでしょうか。

自信満々の人ほど信用できない

今の時代、誰だって不安で当然だと思うのです。

 

世の中の変化のスピードがとんでもなく上がっていて、特にIT業界の技術変化には業界人だってついていくのに必死だったりします。そんなめまぐるしい世の中で世界の動向を正確に予測することはほぼ不可能に近いです。できるとしてもごく大まかな流れを見極めることくらいです。

たとえば世の中がどんどん自動化されるという流れはおそらく間違いないでしょう。工場の流れ作業はどんどんロボットがやるようになっていきます。自動運転車が普及して運転手という職業がなくなる可能性もかなり高いと思います(ただしこれには「自動運転車が事故を起こしたとき、被害者やその遺族はそれがただの事故だと納得できるのか? 結局メーカーや同乗者など人間に責任を追及できないと社会的に受け入れられないのでは?」という倫理的な問題があって予想以上に普及に時間を要するかもしれません)。

逆に予想できなかった流れとしてスマートフォンの普及があります。たった数年で世界の人口の大半が手にするようになったこの電子機器に対し、発売当初あるいはその前からその普及の勢いを予想できた人はほとんどいなかったでしょう。普及を予想していたとしてもそのスピードは予想以上だったはずです。

他にも日本では大手メーカーの凋落が叫ばれて久しいです。SHARPをはじめほんの十年かそこらで世界でのシェアを激しく落としています。

こういう例は挙げればいくらでもあると思うのですが、要するに変化のスピードが速すぎて、将来の世の中をまともに予測するのは相当に難しくなっています。

 

そんな時代に自信満々で生きていける人が僕は信じられません。

 

今自分がやっている仕事が来年あるのか、あるいは5年後にあるのか。僕の時代の就活(5-6年前)では「入社パス」の出るインターンで超有名だったワークスアプリケーションズのCEOがこんな刺激的なタイトルの本を出していますが、

今やっている仕事が5年後も存続できる可能性はかなり低いと思います。まったくなくなることはなくても形態がかなり変わったり、求められるスキルが変わったりと、一筋縄ではいかないはずです。

世の中の動きについて、これはこうなる、あれはああなる、とやたら断言する人もいますが、その自信はどこから来るのか不思議です。僕は自信がないので断言できることは少なくて、たぶんこうなんじゃないかなぁ、くらいの言い方しかできません。それは自分の考えに自信がないというよりは、世の中の変化のスピードを考えたらそのくらいのことしか言えないという論理的な帰結です。未来はもはや誰にとっても不透明です。

勝手な推測ですが、断言できる人は単に情報のインプットが足りていない可能性もあります。世の中の動きについてたくさんの情報を仕入れていればおそらくそういう見解は出てきません。

 

かといって別に悲観的なことばかりではなく、自分の行動で世の中に変化を起こして未来を作り出すこともできます。そしておそらく、世の中が変化しやすい分、自分で変化を起こすということもやりやすくなっているのではないかと思います。

どうせ5年後の世界すらどうなっているかわからないのであれば、自分のやりたいことをやってみた方が得です。うまくいかないことが大半でしょうが、もし万が一うまくいってしまったら自分の人生は超絶楽しくなると思います。

 

 

休みのとり方

正しいのかどうかまだまだわかりませんが、独立してからの休みのとり方はざっくり「1週間に半休を2回とる」という形に落ち着きつつあります。


会社員を辞めて独立してから最初の2ヶ月くらいは、特に休みもとらずに毎日活動していました。が、すると時々、一気に疲れが出て頭も体も動かなくなってしまうことが何度かありました。しかも急に。で半日から1日くらい休んでようやく再始動という感じでしたが、フル稼働状態に戻るまではもっと時間がかかってしまっただけでなく、計画も崩れるので精神的にもストレスになりました。


創業期の起業家、あるいはフリーランスとして仕事をするということは、自分が動かないと仕事が何も進まないということです。仕事が進まなければ売上も立たないので収入も途絶えます。将来的な事業の成否というのが最大の問題であるとはいえ、まずは自分が何か行動することが、自分に収入をもたらすための必要条件だと思います。それにやる気にも満ちているので、やろうと思えば突っ走ることはかなりできます。


だからと言って猛突進を続けるわけにも行きません。事業の立上げは1週間とか2週間でできるものではなく長期戦なので、適度に休憩も必要です。そのため、数ヶ月あるいは数年先に向けて自分と事業の累積の成果を最大にする形で仕事をしていくのが正しいと考えています。何ヶ月もずっと休みなしの毎日16時間労働みたいなことは、世の中にはできる人も一部いるみたいですが、僕の場合は過去に激務を経験して、そこまではできないということがよくわかっているつもりです。ということは適宜休憩を挟んで、息切れせず、高めのパフォーマンスで仕事をずっと続けることが重要だと思っています。途中で突然体を壊して何週間も休むことにでもなったら最悪です。周りにも迷惑がかかります。


ということで僕も一旦、予期せぬタイミングで疲れが出て休まざるをえなくなることを防ぐため、週に1日休みをとるようにしてみました。土日は仕事の関係で行くべきイベントが多かったりするので、月曜とか火曜に休みをとっていました。が、今度はその日の夜、「明日、仕事か…」と憂鬱になるという信じがたい事態が発生しました。マンデーブルー的なアレです。


自分が生涯をかけて取り組みたいことが見つかったから、環境的に恵まれた会社での仕事を辞めて独立しました。基本的には仕事がしたくてしょうがないのです。やりたいことは無限にあって、それは仕事でもあるけど、自分が本当にやりたいことでもあるから楽しい。つまり仕事と遊びが一体のような感じになりつつあるのです(まだ完全に重なってはいませんが)。それなのに、その仕事を億劫に感じてしまった。その時は自分で自分に愕然としました。「あれ?俺はこれをやりたくて独立したはずなのに、なんでめんどくさいと思ってるんだろう?」。ウソだろと思いました。


それまで毎日楽しく取り組んできた仕事に憂鬱を覚えてしまった。なぜか? その原因は「休みすぎたから」ではないかというのが今の自分の考えです。丸1日休みをとって、仕事と関係ないことをし、ゆっくりしすぎたせいで、スイッチを戻すのが難しくなってしまった。


ではどうすればよいか? 「休むけど休みすぎない」ようにすればいいんじゃないかということで、次は半休をとるようにしました。まったく仕事をしない日を作らず、毎日少なくとも半日くらいは働くことで、スイッチを完全にOFFになることを避けているような感覚です。いや、完全OFFにするけどすぐにONに戻る前提でOFFにしているような感じかもしれません。


幸い今のところは、これでわりと上手くいっています。集中力も途切れすぎず、適度にリフレッシュもできています。1回だと疲れがとれきれないことがあるので、週に半休を2回くらいにしています。


今は事業の立上げ中、しかもすべての要素が不確定で試行錯誤しかないような状況なので、なるべく頭を常にフレッシュに保つようにはしています。毎日毎日疲れきっていては新しい情報もすんなり入ってこないし、新しいアイデアも出てきにくいと思います。


そろそろ会社を辞めて半年経つのですが、働き方について試行錯誤した結果、今はこんな形に落ち着いています。今の自分には合っているという意味ではこれが正しいと思っています。けど事業のフェーズが変わったり(というか変えていかなければいけない)、違う考え方に触れたりすることで、これからまた変わるかもしれません。

自分の頭で考える

「今僕たちにできるのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、より良い未来を創ることーーつまりゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、自分の頭で考えることだ。」

 

アメリカの大起業家であり大投資家のピーター・ティールの著作『ゼロ・トゥ・ワン』。何か新しいことをやろうとしている人間にはものすごく刺激になる素晴らしい本でした。

 

冒頭の文章はこの本の結びの一節ですが、ここに「自分の頭で考える」ことの大事さが説かれています。ちょうどこの本を読む少し前から、物事について自分の頭で考えることが重要なんじゃないかと思い始めていた自分としては、とても背中を押されたというか、自信を持てたのでした。

 

さらに言うと最近は以下の3つを大事にしています。

 

・自分の五感で感じること、体験すること(インプット)

・自分の頭で考えること

・考えたことを自分の言葉で表現すること(アウトプット)

 

これをするとしないで何が変わるかというと、説得力が大きく変わると思っています。何かもっともらしいことを話していても、どうも他で聞いた話をそのまま話していたり、自分の言葉で語れていなかったりすると、説得力に欠けます。同時に、自分の意見がない、あるいは中身のない人みたいな印象になりかねません。

 

そうではなくて、もっと自分の感覚を大事にしないといかんなと思うのです。

 

本で読んだことについて自分の頭で考える。よくわからない場合もできるだけ考えて判断する。で自分の意見としてストックする。あるいは、自分の目で見て、耳で聞いて、触ってみる。どう感じたか振り返ってみる。その上で、自分の考えや感覚を自分の言葉で説明する。

 

多少間違っててもこれで相当説得力が出るし、ちゃんと自分の頭で考えるのが習慣になれば、他人から見た印象も変わると思います。間違いについては、人間みんな完璧ではないので間違いがあって当たり前だし、そもそも他人からするとわりとどうでもよいことで、本人だけが意識しすぎているということも多いです。

 

3つとも、ビジネス云々以前に人として大事だなと思うこの頃です。