夢は大きく歩みは手堅く

トリハダ代表 野島優一のブログ

アートの市場を拡げたい

市場を拡げる仕事をしたいと思っています。

 

まだデータをとったわけではないですが、日本における美術や芸術の市場はかなり小さいのではないかと思っています。小さいというのは、国内の他の産業(なんでも、たとえば飲食業とか)や、近しいところでは国内のエンタメ産業(音楽とか映画とか)、あるいは欧米各国の芸術市場と比べて、です。とはいえ私もまだまだこの世界について勉強中なので、「そんなことないよー」という方はぜひ教えてほしいです!

 

市場を「その分野で出回っているお金の量」、つまり「その分野に人々が払っているお金の量」と考えると、そもそも芸術分野にお金を使っている人は自分の周りにもかなり少ないし、その金額はたかが知れています。「アートが好き」と自覚している人でさえ、年に数回有名美術館に行って、入場料とグッズで1回2,000円くらい使うだけだと思います。それだと年3回行っても一人あたり6,000円です。でもそれって、ちょっといいレストランでご飯食べてお酒飲んだときの1回の金額です。しかも年3回美術館に行く人の数だって決して多くないと思っています。

 

誰ひとりとして美術館に行かないような状況と比べたら、たくさんの人が美術館に行くこと自体は素晴らしいと思います。でもそれだけでは市場は広がらないし、プロモーションをやった広告代理店くらいしか利益が出ていないかもしれません。事実、調べていくと有名美術館でさえ経営は楽でないらしく、だからこそ国立や都立などの公営施設が多いのだと思います。

 

もちろん、美術館によく行くだけでなく小さなギャラリーを回ったりするのが好きな人もいます。けどたぶん相当少ない。僕の周りにもほとんどいません。これを読んでくれているあなたの周りにはどれくらいいるでしょうか? 「うーん1人も知らないなぁ」という人も結構多いかもしれません。

 

ギャラリーに行く人が少ないということは、ギャラリーで開かれている個展に来る人が少ないということです。それは、個展を開いているアーティストのお客さんが少ないということです。つまりお金を払ってくれる人が少ないということであり、アーティストが食べていけないということです。

 

これも最近たくさんの人に話を聞いてわかってきたことですが、個展を開くのにもかなりお金がかかるんです。まず当然、作品を作るための画材のお金がかかります。これも決して安くないので、なるべく安いお店を回ったりして節約するわけです。次に額装、つまり額縁のお金がかかります。これはモノによりますが結構かかります。作品のサイズが大きい人は画材も額縁も高くなります。そしてそこにギャラリーの使用料がかかります。1日いくらという形で価格が決まっているところと、作品の売上の何割を支払うという形のところがありますが、どちらも安くはありません。当たり前ですが立地のよいギャラリーであれば家賃が高いので使用料も高くなります。かといって激安のところでばかりやっていては、大通りから隠れているなど立地が悪くてお客さんが全然来てくれない可能性もあります。

 

別にギャラリーを悪く言うつもりはなく、むしろギャラリーの存在はアーティストにとっては非常に重要だと思います。ギャラリーがなければそもそもどこで個展をやるのかという話になります(ただしこの問題はこれからトリハダが全力で解決を進めます)。それに大半のギャラリーはアーティストを応援する気持ちの強いオーナーさんが運営されていると思います。一部そうでないところもあるらしいですがきっと自然に淘汰されているはずです。そしてもうひとつ重要なのはギャラリーも決して経営が楽なわけではないということです。アーティストからすると高めの価格設定になっていても実はそれでギリギリで、むしろ儲からないケースが多いらしいです。つまりそれも、要するにアートの市場があまりにも小さいということなのではないかと思います。

 

そんな中で、その小さい市場を食い合うようなことをやっても仕方ないと思うのです。いや、仕方ないと書くと言いすぎかもしれませんが、芸術の世界にみんながもっとお金を払うような仕組みを作ってパイを大きくしていくことの方が、ずっとずっと重要だと思います。だからそれをやりたい。

 

既存の市場の中で既存の他のプレイヤーからパイを奪うというのは、自分あるいは自社の成長はできますが限界が見えています。特に今の日本のアート市場のような小さい市場の中ではなおさらです。しかも他のプレイヤーから奪うというのは彼らにとってはマイナスなわけです。だったら自分でパイを拡げて、そのパイを享受した方がいいし、拡がったパイを他のプレイヤーに享受してもらうこともできます。誰かが得すると他の誰かが損をするというゼロサムの環境でゲームをするよりは、全プレイヤーにプラスをもたらす環境を作り出す方がいいはずです。とはいえ、それが難しいからこういう状況になっているのだと思いますが…。

 

芸術の市場を拡げて、この世界により多くのお金が流れるようにしないと、アートの世界が広がらないし盛り上がらないし、アーティストの数も増えません。

株式会社トリハダ 所信表明

TRIHADA(トリハダ)という会社を作りました。日本でアートをもっと身近にするために、まずアート作品のレンタル事業を興します。

 

TRIHADAとは 

TRIHADAはアート作品のレンタルサービスです。

 

目的

アートをもっと身近にする。アートを通して、鳥肌の立つような感動を増やす。それがTRIHADAの目的です。そのために、以下の2点に取り組みます。


1. 誰もが日常的にアートに触れる環境を作る
= アートの流通を増やす


2. アーティストの持続的な制作活動を支援する
= アートの生産を増やす


思い

TRIHADAは、人間にとって最も価値があるのは、日々の快適さではなく一生心に残る「感動」だと考えます。そんな感動を味わう機会を増やしたい。それが根本にある思いです。

世の中の多くの仕事は何かを便利にする仕事です。それには大きな価値があり、その価値を享受して私たちは日々生きています。しかし、人間は便利さにはすぐに慣れるため、その価値は時間とともに薄れがちです。特にIT技術の進展が著しい近年においては、次々と新しい製品やサービスが登場するため、ある日便利だと思ったものが1年後には不便に感じることも当たり前に起こります。一方で、アートに触れたときの感動は、心の中に一生残ることが多いとTRIHADAは思います。そしてそうした感動の方が、日々の便利さよりも、きっと人間にとって価値があるのではないでしょうか。


さらに、何かを便利にする仕事は今後どんどん自動化されていき、すべて人工知能とロボットが行う時代がまもなく来ます。そうなったときに人間は、アートのような、生活に必ずしも必要ではないが、感動を生むものに、より価値を感じ、時間を使うようになるのではないかと、TRIHADAは考えます。

一生心に残る感動を生み出すのは、何もアートだけではありません。音楽、映画、本、旅行、食事、人との出会いなど、挙げればたくさんあります。その中でなぜアートを取り扱うのか? それは、日本においてアートが生活に浸透しておらず、大きなポテンシャルがあると考えるからです。

 


日本はアートに興味のある人が少ないと言われています。しかしそれは国民性の問題ではなく、アートに触れる機会が少ないからではないでしょうか。

日本が欧米と比べて、街中にアートが少ないのは間違いないでしょう。美術館やギャラリーの数も多くないどころか、来場者数も少ない。

 

それに、日本はアートを楽しむ敷居が高すぎます。アートは美術館に行ってオシャレに楽しむもの、という感覚が強すぎるのです。アートはもっと日常的に、カジュアルに楽しんでよいものです。


そこで、お店の中やオフィスの中、家の中、さらには街の中にアートの供給を増やし、誰もが日常の中でアートに触れるようにすれば、関心を持つ人も増えるのではないかとTRIHADAは考えます。しかし作品を購入するのは金額も高く、やはり敷居が高いので、まずは低額で始められるレンタルでサービスを展開していきます。


アーティストとお客様である一般人との間にも厚い壁があります。例えば何かのイベントで展示されていた絵が気に入って、その作者が会場にいても、遠慮してなかなか話しかけられないという人が多いのではないでしょうか。ところがアーティストの中にも、お客様とのコミュニケーションをとりたいと思っている人はたくさんいます。これはとてももったいないことです。アーティストだって一人の人間なのです。一般人がアーティストと気軽にコミュニケーションをとれるようになれば、よりアートが身近な存在になります。TRIHADAはこの問題にも取り組んでいきます。

 


アートの供給を増やすには、アートの制作者であるアーティストの支援も必要不可欠です。

今の日本はアートの市場が小さいため、アーティストがアートだけを生業とすることは難しい状況です。そこで、まだ駆け出しのアーティスト達にわずかでも収入を提供し、持続的に作品を生み出せるようにすることで、より多くの作品を世に出していきたいと考えています。


作品はあくまでアーティストが生み出したものなので、TRIHADAでは収益の大半をアーティストに還元することを原則とします。それによってさらに多くの作品を生み出しもらうことが目的です。


また、アーティストは制作以外のことが得意でない人もたくさんいます。そこで、例えばネット上の情報発信等、TRIHADAがお手伝いできることはお手伝いさせて頂いて、アーティストが制作活動に専念でき、かつ持続的に収入が得られる環境づくりを支援します。TRIHADAに作品を出品することも、1つの広報活動になればと思っています。
 


2016年5月1日
株式会社トリハダ 野島優一