2016年10月 NY滞在での気づきのまとめ
- まず美術館が大きい、そして数が多い。
- METの広さは壮大で、NYのど真ん中にあるとは信じられない。どの展示スペースも広く天井も高い。その分作品も大きい。
- 次にギャラリーが大きい。天井もとても高い。そして数が異常なほど多い
- ギャラリーが多いのはChelsea、Lower East Side、Upper Eastなどのエリア。BushwickやWilliamsburgにもあるがスタジオが中心。
- Upper Eastにもたくさんギャラリーがある。このエリアは高級マンションや衣服店などが並ぶこともあり、ギャラリーもやや敷居が高いところが多い印象。アポイントのみだったり、入口に鍵がかかっていたりする。
- 日本でよく見るようなA3サイズくらいの作品はほとんどなく、どれもメートル級。壁いっぱいのサイズの作品もたくさんあった。大きい分、見たときのインパクトも強い。
- 大きな作品だからか、発色も強くはっきりしている
- 発想が自由で斬新。これはNYの風土が大きく影響していると思う。日本と比べてあらゆるもののサイズが大きく、多様な人々や文化が常に交わり、細かいことや他人のことは気にせずに自分のやりたいことを追求する考え方が強い風土だから、作品の発想も自由で独特なものになるのだろう
- 日本のようにすべてが細かく、整理されていて、他人に気を使い、出る杭が打たれる風土の中では、NYのギャラリーに並ぶような作品は生まれえない
- アートフェアの数や規模も日本とはケタ違い
- 伝統的にはArmoryが最大で評価も高かったが、最近NYに進出したFriezeが作品や出店者のセンスの良さで急激に評価を上げている。規模ではまだArmoryの方が上だが、今後はより競争が激しくなる様子
- Governors Island Art Fairも非常に多くの興味深い作家が展示していた。
- 作品が大きいからでもあるが、値段も高い。日本では考えられないレベル
- NYではアートが明確にビジネスとして成り立っている。市場が大きく、お金が流れるからこそ、そこで使われるお金も多い。だからスケールが大きくなる
- ギャラリストも完全なビジネスマンであることが多い
- 作家も営業マインドが強い人が多い
- NYでは日本よりアートが身近な分、作品を買う人も多い。つまり作家にとってはチャンスが多い。しかし、だからこそ作家も多くて競争が激しい。日本もNYもアートで生活できている作家の割合は1割くらい
- NYでは日本よりアートが身近で、作品に触れる人が多いのは間違いない。作品を見る人も買う人も必ずしも富裕層だけではなく、一般人も買って家に飾る文化はある。
- 美術館の敷居が低く誰でも来る。無料の曜日や時間帯も設定されている。学校の生徒が先生と一緒に作品の前に座ってディスカッションしたりもしている!
- ギャラリー街も「行けば何かやってる」と気軽に来る人が多い。犬の散歩しながら見に来る人もいる。日本ではギャラリーがマイナーで、場所を知っている一部の人しか来ないが、この点はかなり違う
- 飲食店や美容室も必ずと言っていいほど絵や写真が飾ってある。1軒あたりの点数も多い。作家が売り込んで飾ってもらうケースも多い
- グラフィティやミューラルアートも街中にある。少し歩けば必ず何かある
- NYの方が作品が多く売れることも事実。ただしそれは作品に触れる人の絶対数が多いからであり、作品を見た人のうち買う人の比率は日本もNYも変わらない
- 結局"見た人の0.1%"しか買わない
- → ということは、日本でも作品に触れる人の数を増やせば、売れる作品の数も増えるはず!
- 作品が多く売れるので作家も多くなり、競争も激しい。
- 世界中から続々と作家や関係者が集まっているのは事実。"年間2,000人のアーティストが生まれる"とも言われる
- 日本からも毎年たくさんの作家がやってくる。長く活動している人もたくさんいる
- 日本よりも現代アートが盛んと言われる韓国からもたくさん作家が来ており、活躍している人の数は日本人よりも多い様子。当然ながらレベルも高かった。
- しかしその分競争も激しい。結局日本でもNYでも"9割の作家は食えていない"
- ギャラリーの数はNYの方が圧倒的に多いが、ギャラリー間の競争も激しく、経営が楽なわけではない。どんどんできては潰れていく
- 日本でも美術品にお金を使う人はいるが、NYとはその対象が異なる
- NYでは"新しいもの"や"これから価値がついてくるもの"が評価されやすい。だから現代アートが売れる?
- 日本は既に"価値が確立されたもの"が評価されやすい。だから骨董品やブランド品が売れる。
- NYでもアート業界はお高くとまっており("snobby")、その雰囲気は日本と変わらない。しかしNYは一般人がそれに気圧されず、自分の興味に従って行動するので、結果として市場が大きい
- 日本で現代アートが生き残るには一般人を取り込むしかない
- 日本のアート業界は閉鎖的でお高くとまっているので、普通にやっていても広がらない。
- 特に今はアートの裾野を拡げることにあきらめムードが漂っている。数年前までは一般人にアートに親しんでもらうような試みが多くあったが、どれも上手くいかずに終わってしまった
- そうした試みのひとつだが、変な方向に行ってしまったのがワークショップ。地方で子ども向けにやったりしているもの。だが、作品が残されることもなく、アートへの関心にもつながっていない。せめて作品を残すべき。参加費が安いことも重要
- アート業界での経験の有無は関係ない
- 海外のキュレーターはアカデミックな出身の人が少なく、デザイナーや建築士など、プレーヤー側の人が多い。必ずしもアート業界の経験があるわけでもない
- アート業界での経験があることで逆にしがらみが生じ、足かせになることもある
- 日本で増えているアートレンタルのサービスも、まだどこも成功はしていない。業界人がやったから上手くいくというわけではない
- アート業界ではない文脈でサービス展開したほうが可能性はあるはず