夢は大きく歩みは手堅く

トリハダ代表 野島優一のブログ

なんで起業したのか

僕がどうして「アート作品のレンタルサービスで起業する」に至ったのか、なんとなくわかっているつもりで人にも説明してきましたが、自分が忘れないためにも整理しておこうと思います。

まずその理由をすごく大まかに分解すると以下の2つになります。

A 日本でアートをもっと身近にしたいという思いが強くなった
B もともと持っていた起業意欲が強くなった

このAとBそれぞれの思いが強くなった理由はこんな感じです。

「A 日本でアートをもっと身近にしたいという思いが強くなった」理由。

A.1 自分がアートを好きだから。自分が感じるアートの魅力をより多くの人に伝えたい、感じてほしいと思ったから。

facebook等のSNSで毎日やっている「1日1アート」という投稿もこの思いからやっている。僕の投稿を見て誰かが少しでも興味を持ってくれたり、新しいアーティストや作品に出会えたり、展示を観に行こうと思ってくれたりしたらとても嬉しいと思って日々投稿している。すごく小さなことだけど自分の記憶の整理にもなるし、しばらく続けてみる予定。

A.2 日本はアートの敷居が高く、元々好きな人や業界関係者以外はその世界に入っていきづらいと思ったから。

さらに分解するとこんな感じ。

・ A.2.1 アートは美術館やギャラリーに行ってオシャレに楽しむもの、みたいなイメージが強いから。

・ A.2.2 アート、特に現代アートはよくわからないもので、ごく一部の人にしかその良さが理解できない、というイメージが強いから。

・A.2.3 アート作品は高額で、一般人には手が出せないことが多いから。

A.3 人間にとって最も価値があるのは、一生心に残る感動であり、アートはその感動を与えてくれるものの1つだと思ったから。

・人間は環境に慣れることができる生き物である。それでもずっと記憶に残るのは深い感動だと思う。死ぬ時に思い出すもの、と言ってもいいかもしれない。

A.4 一生心に残る感動は、音楽や映画、本、食事、旅行などアート以外のものからも得られるが、アートがその中で最も日本で一般人になじみがなく、ポテンシャルがあると思ったから。

 

「B もともと持っていた起業意欲が強くなった」理由。

B.1 自分に自信がついたから。

正確には、リサーチ・インプット能力、業務処理スピード、ビジネス/商売における基本的な思考回路と判断、発想の柔軟性、多くの人が面倒くさくてやりたがらないことをコツコツ淡々とやる力(笑)、などに自信がつき、「これなら会社組織を出てもやっていけるかもしれない」と思ったから。どの能力も具体的な経験を通して自信をつけたが、ある上司が僕に自由に仕事をさせてくれたことが大きい。その人と仕事ができたのは幸運だった。

B.2 既にできあがった事業に手を加える仕事(1→10、10→100)より、ゼロから事業を立ち上げる仕事(0→1)の方が楽しくて、自分に向いていて、かつ社会的にも価値があると思ったから。

起業はまさにゼロイチである。また、これは価値観の問題だが、何においても最初にやった人はすごいと思う。

B.3 上司がいる状態で仕事をするより、上司がいない状態で仕事をした方が、自分のパフォーマンスが上がると思ったから。

これは他人に対して必要以上に気を遣ってしまう自分の性格が原因である。前述上司は僕にとてものびのびと仕事をさせてくれて本当に感謝しているが、それでもなぜか僕が勝手に気を遣ってしまい、そんなことせずにガンガン仕事を進めた方が結果的に上手くいったと思われることが一度ならずあった。自分の考えも大方間違っていなかった。この性格を自覚しながらも直せないということは、上司なしで仕事をした方が、自分のためにも社会のためにも良いと思った。

B.4 自分の仮説を思う存分試したいと思ったから。

これは1つ前の理由とも少し重なる。自分が思うことを思いきりやるには独立した方がやりやすい。会社組織の中でやるとなるとどうしても障害が多い。どんな会社でもそうだと思う。

B.5 ローリスクでの起業が可能になったから。

これは時代によるところが大きい。ウェブサービスであれば超低コストで立ち上げられるし、リーンスタートアップの考え方ならウェブに限らずそうだ。資金が必要になった場合は、以前に比べて調達もしやすくなっている。また、そもそも個人でできることが非常に多くなっているので、まずは1人で事業を立ち上げることも可能であり、人を雇うリスクも負わなくていい。起業における成功確率が上がったかどうかはわからない。が、ハードルが大きく下がり、チャンスが増えた時代だと思うので、この時代に生きていることは幸運だった。

B.6 新しい事業やベンチャー企業はほとんどが失敗しているので、自分が失敗したところで社会にとってはどうってことない、失うものもないと思ったから。

僕が失敗したって世界にはほとんど影響なくて、地球は回るし社会は動いていく。逆に成功したらものすごいことが起こるかもしれない。その意味で起業は本質的にローリスク&ハイリターンだ。

B.7 たとえ失敗しても死ぬわけではないので、やりたいことをやらずに後悔するよりは、やって後悔したほうが良い人生になると思ったから。

自分に言い訳をして生きていく人生は辛い。たぶん。

B.8 数人の起業家と知り合い、刺激を得たと同時に、「自分にもできそう」と思ったから。

3年前くらいから何人かの起業家と知り合って仲良くなった。これはとても幸運だった。教わったことは数え切れないくらいある。昔の友だちでいつの間にか起業していたヤツもちらほら。これも刺激になる。

 

加えて、AとBの両方にかかる理由を1つ挙げておきます。

A.5/B.9 アートの分野には起業家が少ないから。

これは後から気づいたことでもある。今は起業のハードルが下がったため、起業家の数が急増している。中でも盛り上がっているのはITやウェブの分野だが、そこには起業家が多すぎるし、従って優秀な人も多いことになる。自分が起業家として圧倒的に優秀だという自信がない限りはそこで勝負するのは厳しいと思った。でもアートの分野には起業家が少ない、というかそもそもアートに興味のある起業家が少ない。だから、起業家としての競争戦略を考えるとこの分野は自分に適していると思った。どうせやるなら誰もやらないことをやりたいし、その方が、社会における自分の存在意義が大きくなるというか、社会全体を見たときの自分の貢献度が高くなると思った。

 

そして、Aに関しては、具体的な方法として「a アート作品のレンタルという事業形態を選んだ」わけですが、その理由を整理します。

a.1 日常生活の中でアートに触れる機会を作る必要があると思ったから。

美術館やギャラリーにいかなくてもアートに触れられるように、飲食店やオフィスなど様々な場所にアート作品を置き、アートの供給を増やす必要がある。日本人はアートに興味のある人が少ないと言われるが、その原因は供給の少なさにあると思っている。この仮説を検証したい。

a.2 アートを低価格で楽しめる機会を作る必要があると思ったから。

アート作品は通常購入して楽しむものだが、概して価格が高額であり、それがハードルになっている。a.1 のためにも価格を下げる必要がある。レンタルなら月額制で低価格にすることができる。

a.3 シェアリングエコノミーの市場が拡大しているから。

安易かもしれないが、シェアリングエコノミーの波が来ていることは追い風になると思った。

 

さらにAに関する別の視点では、「b 日本を選んだ」ということもあります。アートでビジネスをするなら、もっとアート市場の大きい国はアメリカをはじめとしていくらでもあるし、英語が使える人間としては海外で働くことも不可能ではありません。その上で日本を選んだ理由を整理します。

b.1 住んだこともない国でいきなり起業するのは、成功確率がとても低いと思ったから。

そもそもアートという未経験の分野で起業するので、さらに土地まで未経験のところに飛び込むのは、さすがに無謀に思えた。

b.2 日本はアートの市場が小さいが、だからこそそれを拡げる仕事には価値があると思ったから。

もともと市場が大きいところよりは、まだ市場が小さいところで事業を起こした方が、市場に対するインパクトも大きいし、社会にとって価値のあることだと思った。

だいたいこんなところです。

1つ付け加えると、このアート作品のレンタルサービスは、カナダにあるフォーシーズンズホテルがやっていた「レストラン内ギャラリー」から、最初の着想を得ています。その取り組みはレンタルではなく展示と販売のみ。若手の現代アーティストの作品を店内にインテリアとして展示しておき、来店したお客さんは気に入った作品があれば買うことができる、というものでした。同ホテルチェーンの創業者の本に出てきた話で、現在はやっていないようでしたが、なるほど、面白いアイデアだな、と思ったのをよく覚えています。

 

いま読み返すと、考えが変わりつつある部分もやはりあります。節々で振り返って原点に立ち返るのにこの記事を使おう。